ワタミ過労自殺事件和解条項について

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本年12月8日、居酒屋チェーン「ワタミ」の従業員が過労自殺し、遺族がワタミと当時の代表者渡辺美樹氏らを相手に損害賠償を求めていた訴訟において、和解が成立しました。

本和解は、和解額が約1億3000万円と高水準であることに加えて、次のように多くの画期的な内容を含んでいます。

 

 第一に、和解条項が公開されていることです。

このような労災事件において、使用者が和解に応じる場合でも、口外禁止条項を付けて和解内容を公にするのを避けることは珍しくありません

会社側からすれば、同種の紛争が生じた場合に、以前の和解内容が前例となるのを避けたい心理があるのでしょう。

ところが、本和解条項には、口外禁止条項が設けられるどころか、逆に、会社と渡辺美樹氏のホームページに和解条項を掲示することが義務付けられているのです。

和解内容を世に知らせることが、再発防止に資するという遺族の強い意志が感じられます。

 

第二に、会社や渡辺美樹氏の法的責任を明確に認定している点が挙げられます。

経験上、この種の事件において、会社側は、法的根拠を明らかにしない「解決金」名目での金銭の支払いに応じることが少なくありません。

ところが、本和解条項では、元従業員の死亡について、会社に債務不履行と不法行為責任を認め、渡辺美樹氏には、「会社法419条1項に基づく取締役の注意義務及び条理に基づく注意義務を懈怠し、元従業員の本件死亡について、会社法同条及び不法行為により、最も重大な損害賠償責任を負うことを認める」としています。

これは、かなり踏み込んだ認定であり、このような和解条項は極めて画期的であると言えます。

関連して、和解条項に被告らの謝罪を謳っている点も重要です。

 

第三に、「過重労働再発防止策」として、再発防止のための詳細な措置が盛り込まれた点は注目に値します。

具体的には、タイムカードによる徹底した労働時間管理、36協定の順守と上限時間の低減、労基署からの是正勧告があった場合の周知・報告、正社員募集の際に就労実態を正確に説明すること等が規定されたほか、過去に会社が命じたボランティアや課題作成に要した時間について従業員に残業代を支払うことや、従業員に購入させた書籍代金の返還も盛り込まれるという徹底ぶりです。

通常、和解とは原告と被告の間の取決めに留まりますが、このような再発防止策が盛り込まれることによって、全従業員の労働条件を改善させることが可能となりました。

 

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使用者は労働者に対して安全配慮義務を負っており、うつ病や過労自殺の原因となるような長時間労働や過重労働を命じることは、許されてはなりません。

今回の和解は、過労自殺を発生させた使用者や取締役がいかに重い責任を負うかを明らかにした点で画期的であると言えます。

もっとも、このような和解を勝ち取るには、当事者や労働組合、代理人、裁判官の強い意志が不可欠です。

ご自身やご家族が労働災害にあった場合には、まずは専門の弁護士に相談されることをお勧めします。

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