16歳の息子が、喧嘩をして友人に怪我させてしまいました。 その友人の保護者の方が、傷害事件として被害届を警察に提出したようです。 今後、どのような手続きになるのでしょうか。裁判を回避する方法はありますか。

ご存知のとおり、少年については「少年法」という刑事事件について特別な措置を講じることを目的とした法律があります。
したがって、成人の刑事事件とは流れを異にしますが、以下、簡単にご説明します。
捜査段階について
捜査段階では、基本的に、成人と同様の手続きの流れになります。
逮捕されることもありますし、逮捕されないまま、取調べがなされることもあります。
逮捕そのものによる身柄拘束は数日で終わりますが、引き続き「勾留」といって、一定の要件のもと10日間ないしは20日間の身柄拘束を受けることがほとんどです。
ただし、少年の場合には「やむを得ない場合」でなければ勾留を請求できないとされており、理屈上は身柄拘束の制約をかけています。
また、勾留された場合、少年であっても、一定の事件(傷害事件も含む)では国選弁護人を選任することができますので、費用を理由に弁護人の選任を諦める必要はありません。
その他、身柄拘束は警察署の留置場にてなされることが多いのですが、面会の可否は事件により異なりますので、面会を希望される際には、当該警察の留置担当係にお尋ねください。
少年事件の特殊性として、成年のように不起訴処分という検察官の捜査段階で事件を終了させることができず、
犯罪の疑いがある限り、必ず家庭裁判所に事件を送致されるということがあります。
送致とは、その事件の処理権限を移す手続きです。
すなわち、検察官は、犯罪の疑いがあると思ったときには、その処分を検察官で行うことができず、全て家庭裁判所に任せることとなっているのです。
したがって、たとえば、被害届が受け付けられて事件化されているものについては、捜査段階で示談が成立したとしても、警察や検察段階で事件を終了させることはできず、必ず家庭裁判所が関わることになります。
そういう意味では、裁判所の関与を回避するのは難しいです。
この点は、身柄拘束がなされていなくても同様です。
家庭裁判所に送致された後について
まず、捜査段階で身柄拘束をされていた少年は、家庭裁判所に送致をされた日に、観護措置といって、少年鑑別所に収容されるかどうかの判断がなされます。
少年鑑別所は、少年の身体を拘束するとともに、少年の心身の鑑別を行うための施設です。心身鑑別を目的としており、少年院とは全く違う施設です。
先ほどの逮捕・勾留がなされている場合には、観護措置がなされることがほとんどですが、捜査段階で被害弁償や環境調整等が十分になされていると、観護措置がなされないケースもあります。
観護措置がなされた場合、その期間は多くは4週間以内となっており、概ね20日〜25日程度身柄を拘束されることとなります。
なお、親族や一定の関係者であれば、鑑別所での面会は可能です。詳しくは当該鑑別所にお尋ねください。
一方、相談段階で身柄拘束をされていない少年の場合、観護措置がなされることもありえますが、多くは在宅のまま手続きが進むことになります(ある日、裁判所から連絡がきます。)。
場合によっては、裁判所が「審判を開始しない」旨の決定をすることもあります。
その場合、それで手続きはおしまいです。
最終的には、家庭裁判所にて、審判(判決のようなもの)がなされることとなりますが、審判では、捜査記録のほか、家庭裁判所が収集したものも判断の資料となります。
そのために、審判までの間に、家庭裁判所の調査官が、少年本人やご家族に対して、事件のことのみならず、これまでの養育状況、家庭環境等を調査したりします。
この段階で弁護士に依頼をしていると「付添人」という名称で弁護士が活動します。
この付添人弁護士は、少年本人の言い分を聞きながら、環境調整や示談交渉等をしたうえで、裁判所に対して最終処分の意見を伝えます。
付添人から提出した資料も、家庭裁判所の判断資料となります。
国選付添人制度も拡充していますので、ここでも費用を理由に付添人の選任を諦める必要はありません。
審判では、裁判官が、少年本人やご家族に直接質問をしたうえで、全ての資料を総合的に考慮し、最終的な処分を決定します。
この処分には、①不処分、②保護処分(ⅰ保護観察、ⅱ児童自立支援施設等の送致、ⅲ少年院送致)、③児童福祉機関送致、④検察官送致があり、その他、中間的な処分として⑤試験観察があります。
ここでは詳細は省略しますが、
軽微な事件の場合や犯罪事実(少年事件では「非行事実」といいます。)が認められない場合などには、①不処分とされることがあります。
不処分というのは、上記の保護処分に付さないという意味です。
身柄拘束がなされるような事件であれば、②保護処分が選択されることも多々ありますが、そのうち、ⅰ保護観察処分というのは、施設には収容されないけれども、保護観察所の指導・監督を受けさせる旨の決定です。
また、ⅲ少年院送致というのは、文字どおり、少年院に送致される決定です。