歩道上での自転車と歩行者の交通事故における過失割合については,どのように考えるべきでしょうか。

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歩道は,自転車の通行は原則として許されておりません。

極めて例外的に通行が許されております。しかし,
その場合に自転車と歩行者の事故においても原則として歩行者の過失はゼロであり,歩行者に信義則違反がある場合に限り修正要素として過失相殺が考えられます。

1 自転車は,歩道を走行することができるのでしょうか。
歩車道の区別がある道路においては,歩行者は原則として歩道を通行する義務を負い(道路交通法10条2項),一方で自転車は原則として車道を通行する義務を負っています(同法17条1項)。
したがって,原則としては,自転車は歩道を走行することはできません。

2 自転車が,歩道を通行することができる例外とはどのような場合でしょうか。
以下のとおりとされています。(道交法63条の4第1項)
①道路標識等によって自転車が歩道を通行できるとされている場合
②自転車の運転者が,児童・幼児・70歳以上の者・定められている障害を有するものである場合
③それ以外で,車道又は交通の状況に照らして,その自転車の通行の安全を確保するため歩道を通行することがやむを得ない場合

3 自転車が例外として歩道を通行できる場合には,どのような義務がありますか。
自転車は歩道中央から車道寄りの部分を徐行しなければならず,歩行者の通行を妨げることとなるときは,一時停止をしなければなりません(道交法63条の4第2項)

4 歩道での自転車と歩行者の事故における過失の基本的割合はどうですか。
現状としては,自転車にかかる自動車事故のような過失相殺率(過失割合)の基準については,公にされたものが無く,コンセンサスが形成されておりません。まさしく形成途上にあると言えます。
基本的には,歩行者の過失はゼロであり,自転車が100%悪いと考えるべきでしょう。

ただし,自転車が歩行者の歩く速度に近い時速4,5キロ程度で走行していた場合においては,その点を修正要素とする考え方が有力です。
その場合においても,自転車の通行が例外的にも許されていない歩道の場合には,修正要素とすることは慎重であるべきと考えます。

5 歩道事故における態様別での過失相殺はどのようになるでしょうか。
(1)同一方向に進行する歩行者と自転車の場合
これは,自転車が歩行者に追突したものと考えられ,歩行者の過失相殺率はゼロと言うべきです。

(2)対向方向に進行する歩行者と自転車の場合
端的に言えば,正面衝突です。
自転車が,一時停止義務を果たしていれば十分に防止できたはずです。
対面なので,歩行者にも結果回避義務があるとの反論が自転車側から出てきそうです。
しかし,過失相殺に対しては,慎重であるべきです。
歩行者に信義則から見て結果発生と相当因果関係がある高度な義務違反がある場合に限り修正要素として過失相殺を認めるべきです。例えば,歩行者がふらつきながら歩いていたような場合です。裁判官による「交通事故 損害賠償実務の未来 法曹会発行」p176にも同趣旨の記載があります。具体的な過失相殺率については,同書でも明らかにはなっていません。ふらふら歩いていた原因等にもよると思われますが,せいぜいが10%であり,それ以上とするには,特段の事情が必要と考えます。

(3)自転車直進中に歩行者が交差して歩道に入ってきた場合
要するに,歩行者の歩道外からの歩道への進入という形態です。
これについては,前記書籍p176,177にも紹介されておりますが,実際の裁判例においても,
歩行者の信義則違反を認めて10%の過失相殺を認める説(A説),歩道は歩行者が通行すべきことを貫いて過失相殺をゼロとする説(B説),自動車通行が認められた歩道であるかによりゼロと10%を区別する説(C説)に分かれています。

(4)歩道に歩行者が佇立していた場合
佇立というのは,立ったままでいることです。この場合には,歩行者が信義則上で何かに違反するというのはあり得ません。歩道は歩行者の通行する場所です。歩行者には,過失は全くないと考えます。自転車は,停止して,歩行者の動きをよく見て必要があれば,声掛けをすればいいからです。

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