大腿骨の人工骨頭置換術と,それを行った場合の後遺障害等級はどのようになりますか。

4,991 read.
棒高跳び写真2

人工骨頭置換術術後の股関節の主要運動の可動域が健側の1/2以下に制限された場合には,「関節の用を廃したもの」(8級)に,そうでなければ「著しい機能障害」(10級)となります。
なお,最近の技術の進歩から考えると,可動域制限が改善される傾向にあるため,事例の多くは,10級であると考えられます。

1 主要運動の可動域制限とはどういうことですか。

股関節の主要運動は,屈曲・伸展/外転・内転の2つです。
つまり,屈曲・伸展と外転・内転の組み合わせがあると言うことです。
そのいずれか(屈曲+伸展あるいは外転+内転)の合計値に可動域制限があるかで判断されます。

そして,健側とは,今回の事故で受傷しなかった側で,それに対して受傷した側を患側と言います。

2 後遺障害が認められると,どのような賠償になりますか

後遺障害8級では
労働能力喪失率45% 
後遺障害慰謝料 訴訟基準830万円 自賠責基準324万円

後遺障害10級では
労働能力喪失率27% 
後遺障害慰謝料 訴訟基準550万円 自賠責基準187万円

8級と10級では,大きな違いがあります。
さらに訴訟基準と自賠責基準も大きな違いがあります。
単純に慰謝料だけを比べると10級自賠責基準187万円と8級訴訟基準830万円では,4.4倍です。

3 8級となる可動域制限とは具体的にはどのようなものでしょうか。

人工骨頭置換術をして可動域が健側に比べて2分の1以下に制限されていること

実例 患側:屈曲=60度,伸展=5度 健側:屈曲=125度,伸展=15度
同一平面の運動である屈曲と伸展の合計値で判断されます。同様に外転と内転もその合計値です。

つまり,実例では, 屈曲+伸展は,患側=65度 健側=140度 すると,65度<140度÷2=70度 
このように,2分の1以下に制限されていることになります。

なお,別の原因で健側が既に可動域制限がある場合には参考可動域角度で判断されます。
股関節については,参考可動域角度は,次の通りです。
屈曲=125度,伸展=15度,外転=45度,内転=20度

4 10級となる可動域制限とは具体的にはどのようなものでしょうか。

人工骨頭置換術をしているが可動域が健側に比べて2分の1を超えている場合(可動域制限がない場合も含む)
最近の技術の進歩から,可動域制限が健側に比べて2分の1以下になること,つまり8級となることは,ほぼあり得ないと考えるべきです。

5 大腿骨の人工骨頭置換術とは,どのようなものですか。

(1)大腿骨の人工骨頭置換術
大腿骨頸部内側骨折,偽関節,大腿骨骨頭壊死の場合に多く用いられます。
破壊された骨頭に変えて,金属などの人工素材による骨頭に置換する手術です。

(2)外傷性大腿骨頭壊死症
外傷性大腿骨頭壊死症とは,大腿骨頚部骨折後に生じるもので,骨折の際の血流が途絶えたことによるものです。
その他にも,外傷性股関節脱臼後にも生じることがあります。
壊死の範囲が骨頭の大半を占めていて保存的治療や骨切りでは適応できない場合に人工骨頭置換術が行われます。

(3)後遺障害等級の変更
平成16年の認定基準改正以前は,術後の可動域制限の程度にかかわらず「関節の用を廃したもの」(8級,労働能力喪失率45%)とされていましたが,改正後の認定基準では,術後の可動域制限が健側の1/2以下に制限されたか否かにより,「関節の用を廃したもの」(8級)と「著しい機能障害」(10級)とで評価されることになりました。

(4)再度(将来)の人工骨頭置換術は,どうでしょうか。
人工骨頭も摩耗することから,再度の手術についての費用も因果関係があるものとして認められると考えます。その頻度及び認めることができる年齢という問題もあります。
しかし,医学工学的な技術,特に素材の進歩からこの点も考えていく必要があります。

 

代表弁護士岡田正樹による出版物です

ごめんじゃすまない! 自転車の事故

むさしの森 法律事務所 岡田 正樹 (著)

本書の特長は事故を起こした加害者、事故に巻き込まれた被害者の真実をもとに、それぞれの苦しみや悲しみの物語、危険運転に対する違反切符と罰則、過失の割合、賠償・慰謝料の実例、自転車用の保険、和解に導く弁護士の役目など、あらゆる面から自転車事故を解説しています。 大切なお子さんを加害者に、被害者にもさせたくない。子を持つお父さん、お母さんには必携の書です。

Amazon詳細ページへ

Linke公式Facebookページに是非「いいね」をお願いします!
「いいね!」を押すと、Facebookのニュースフィード上で士業士たちの最新記事を受け取れます。