刑事記録を交通事故に関連して必要な場合において,入手する方法はどのようなものがありますか。

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法廷

交通事故の賠償請求に関して,過失割合が問題となります。

その場合に,重要であり決め手となるものが刑事記録です。
刑事記録の入手の方法には,刑事事件の処理段階・結果に応じて様々な方法があります。
特に,不起訴記録の場合には被疑者調書,目撃者という重要な部分の開示が問題となります。

1 不起訴となっている場合はどうでしょうか。

記録がある検察庁に対する弁護士法23条の2による照会(いわゆる「弁護士会照会」)により実況見分調書の開示がされます。
なお,不起訴事件においては,実況見分調書のみの開示となっておりますが,それのみでは過失割合を判断するのには,十分ではない場合があります。
その場合においては,訴訟となった場合に不起訴記録の被疑者供述調書は原則は裁判所からの文書送付嘱託でも開示はされませんが(刑事訴訟法47条),例外として検察庁が裁判所からの嘱託に対して開示に応じることがあります。
それは争点となっており,裁判の結論を左右するもので,ほぼ唯一の根拠の証明として欠くことができないといったことを前提にして次の条件を満たす場合です。

この条件について,東京地裁交通部裁判官による提案がされています。(新しい交通賠償論の胎動 ぎょうせい p182参照)
現在の実際の運用も東京のみならず他の裁判所においてもこの通りであるか,それに近いと考えます。
(1)当該被疑者を当事者とする民事損害賠償訴訟として係属中であること
(2)裁判所の送付嘱託の決定手続き等により裁判所の判断を経ているものであること
(3)被告(加害者=被疑者)の同意あること
この条件を満たしている場合には,検察庁は不起訴記録中の被疑者調書の開示をなすべきであるというものです。
さらに,仮に被告(加害者=被疑者)の同意が得られない場合に裁判係属中であれば,裁判所は弁論の全趣旨として考慮すべきであるとしております。
つまり,被告(加害者=被疑者)が正当な理由がないのにもかかわらず,同意をしないのであれば被告に不利に扱うと言うことを示唆しております。

また,事故状況の目撃者に対する裁判所からの調査嘱託についても同様です。
同じく東京地裁交通部裁判官による以下の提案がされています。(新しい交通賠償論の胎動 ぎょうせい p184参照)現在の実際の運用も東京のみならず他の裁判所においてもこの通りであるか,それに近いと考えます。
(1)民事訴訟が係属している裁判所は,実況見分調書中に目撃者の存在が明らかなときは,検察庁に対し,必要な書類の送付を求める
(2)検察庁はそれに応じ,裁判所に記録を送付する
(3)裁判所は,それをイン・カメラ手続き(民事訴訟法223条3項)で調査をし,目撃者に特段の不利益ないと判断したときは,当事者に目撃者の住所・氏名を開示する。

2 物損事故となっている場合は,どうでしょうか。

記録がある警察署に対する弁護士法23条の2による照会により物件事故報告書や事故処理報告書が開示されます。
なお,物件事故報告書は,実は十分ではない点が多々あります。

3 起訴されて判決確定前の場合は,どうでしょうか。

いわゆる犯罪被害者保護法3条により事件が係属している裁判所に対して閲覧または謄写の申請ができます。

4 起訴されて判決確定後の場合は,どうでしょうか。

刑事訴訟法53条の規定により記録が保存されている検察庁に対して閲覧を求めることができるとされています。謄写ができるかどうか,どの範囲まで謄写ができるかについては運用に任されているとされております。
実際上多くの事例においては謄写が可能ですが,一定の範囲で個人情報に関してはマスキングが施されております。

5 少年事件の場合は,どうでしょうか。

非行事実にかかる部分(成人での犯罪を構成する事実の部分)については,少年法5条の2により被害者又はその委託を受けた弁護士が,事件の係属する家庭裁判所に対して閲覧又は謄写の申請ができることになっています。

非行事実ではない社会記録(家庭環境,学歴・職歴等)部分については閲覧も,謄写もできません。ただし,この点は少なくとも過失割合を判断する上では閲覧,謄写ができないことが障害とはならないと考えられます。

 

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